続テルマエ・ロマエ 公式サイト

聖なる水と、役行者と、ルシウスと。9話目が更新されました。

  • ヤマザキマリ・ブログ

ブログの更新もすっかり怠っておりましたが、気がつけば明日は来年。世の中が慌ただしさ満載の最中にやっと「続テルマエ・ロマエ」9話目がアップされました。

今回のエピソードでは飛鳥時代、日本に修験道をもたらした彼の方とルシウスが出会います(1巻でもルシウスは若かりし頃の川端康成と遭遇していますが、何気に時空を超えてワープをする場合があります)。

今回のエピソードについては以前から、清らかな水の湧き出る場所は人々の信仰対象となるという、人類の傾向を取り上げたいと予々思っていたものを描いております。

人間にとって生きる力を与えてくれる水、そして健やかな生命力を養ってくれる温泉はまさに天からの恩恵。世界各地にも、聖地とされる水源や温泉はたくさんあります。

というわけで、私の夫の実家からそう離れていない、ヨーロッパアルプスの東側に位置するカドーレ(ヴェネチア・ルネサンス時代の巨匠・画家ティツィアーノの故郷)のピアーヴェ川上流にあるラゴレという湖と湧水にはいかなる病に対しても治癒効果があるとされ、この辺りを司る神の信仰の対象となってきました。

イタリアアルプス北東部CadoleのLagole

紀元前6世紀より聖地とされてきた泉 この地域には20ヵ所の湧水が出ています

 

 

「続テルマエ・ロマエ」9話目より

願いを叶えるために名前を書いて泉に投じるという儀式に用いられていたのは、青銅製の杓子でした。

この地域がイタリア半島とアルプスを越えた属州をつなぐ重要なルートでもあったことから、カルト教的な聖地として人気を集めることになったそうです。

ローマ人は地元民族の泉崇拝を尊重し、同化。土着の神はその後アポロンの立場に置き換えられ儀式も長らく維持されましたが、テサロニケ勅令により西暦 4 世紀末から 5 世紀初頭にかけて泉の崇拝は廃止されました。

この地域と同じような、水源や温泉を信仰の聖地とする場所は日本にもたくさんありますが、今回は僧侶で修験道者でもある友人の僧侶にお願いして、夏に奈良の天川村から大峯山周辺を巡ってきました。

修験道者の皆さんと

天河神社にて かつて空海も逗留していたという和歌山県福勝寺の住職と。頭につけている頭巾はかつては木製で、水を汲んだり、頭を落下物などの衝撃から守る役割をなすものとされていたそうです。

天川村の天河大辨財天社では、水の精である弁財天女を祀っていますし、役行者によって草創された竜泉寺の滝では山へ入る前の修験道者達が身を清める場所となっています。

滝行を強いられるルシウス

こちら竜泉寺の滝で滝行取材をする担当編集者と友人僧侶です。

滝行の後、担当編集曰く、体の中の老廃物や邪念が全て洗い流されたとのこと。

そんなわけで、今回のエピソードをお読みいただいて、皆様にも年末年始を聖なる水で清められたような心地に浸っていただけたら、わたくしとしても嬉しい限りでございます。

ヤンキー座りで聖なる湧水に触れる筆者

皆様良いお年を。

そして2025年も「続テルマエ・ロマエ」をよろしくお願い申し上げます!!